「英語を克服した私が、もし過去の初心者に戻ったら、私はこういう勉強法をするだろう。」 執筆者【高等教育機関の英語教育者 hideさん】

語学(今回の場合、英語)に関してはいくつかの、相互に関連するポイントがあります。

1) とにかく音声から入ること。ここでのポイントを一言で揚げるとすれば、「モノマネ」です。ただ、注意したいのは、「声マネ」ではなく、「話し方マネ」です。モデルとなるのは、聞き取りやすい英語話者であれば、誰でも良いのですが、動画などの映像で表情と共に見られるのが良いです。最近はyoutubeやTEDなど様々な無料で動画を見ることが出来る環境がそろっているので、それらを積極的に使うと良いと思います。

個人的にはオバマ米大統領や、ヒラリー前国務長官や俳優のトム・クルーズ氏などは非常に声も聞き取りやすく、スピードも速すぎず、遅すぎず良い見本だと思います。

2) 1番と関連することですが、「話し方マネ」をするわけですから、実際に「声に出してみる」必要があります。巷では「聞き流しているだけで英語が話せるようになる」という話がありますが、それは迷信です。赤ん坊が言語をマスターする過程を考えてみても分かる通り、何度も何度も聞いて、それを何度も何度も発声して、自分のものにしていくのです。我々にとっての母語である日本語でさえそのプロセスを通るのですから、外国語である、英語をマスターするときに「声に出す」というプロセスを経ずに上手くなれるはずがありません。

逆を言えば、学習の仕方が“受け身”ではダメということになると思います。こと、日本人は英語を話す際、(正しい)文法にとらわれすぎて、話せない・話さない傾向が強い気がするので、どんどん間違いながらマスターしていく姿勢が大事だと思います。

3) 次に、同じく巷ではシャドゥイング (shadowing)というのが良く聞かれていると思います。これ自体は効果がないとは思いませんが、私は、これよりもオーバーラッピング (overlapping)を実践しています。

そもそもshadowingとはスクリプトを見ずに、音声だけを頼りに耳に聞こえる音声を「追いかけるように」声に出していくわけですが、これよりも、スクリプトを見ながら、スピーカーのスピードはもちろん、アクセントも「モノマネ」をして、発声していくというのがカギです。

4) オーバーラッピングをするときのポイントですが、これも漠然とスクリプトを見ながら「話し方のモノマネ」をマスターしても何の意味もありません。まず、最初に日本語での意味を把握しておくことが大事です。結局、どれほど英語に長けたとしても、母語である日本語能力を超えることなど有りえないのです。つまりそれは、母語で理解できていないことを英語で理解しようとしても無理だということになります。

一例をあげます。たとえばTOEFLなどの各種英語の試験で“Meteorology (気象学)”の話題が出たとします。もちろん、背景知識がなくても設問には答えることは可能だと思いますが、日本語での気象学知識もないまま、英語のままMeteorologyを理解することは不可能です。そうしたことからも、まず、選んだ教材の日本語訳(全訳でなくても、要約でも構いません)を先に理解した上でのオーバーラッピングが大切だと考えます。

5) こうしたことから、英語のDVDは大変学習に適していると思います。ただ、ここでのポイントは、同一の話を何度も繰り返し見る、ということです。そうした意味では2時間や3時間を超えるような映画は語学学習には不向きだと言わざるを得ないと思います。30分前後のドラマやコメディーなどを用いる方がいいでしょう。この時、1回目は前述のように日本語での理解をするために、日本語字幕を表示して見ます。

2回目は字幕を消して見ても良いですし、英語字幕にしても良いと思います。またそこでの発見もあると思います。たとえば、『あれ?俳優が何か言っているのに、字幕が表示されない』や『今、自分が思っていた訳と表示された字幕が異なる』などです。最近では有名なドラマやコメディーであれば、スクリプトが簡単にインターネット上で手に入る時代ですから、たとえば『フレンズ Season 1 スクリプト』のようにネット上で検索をすれば、スクリプトを手にすることが出来ます。今度はこのスクリプトを見ながら、(余裕があれば、すぐにでも)オーバーラッピングを始めても良いし、スクリプトを見ながら再度日本語字幕なり、英語字幕で見てみます。

個人的には何度見ても飽きないという点で、コメディーとドラマの2つのジャンルはオススメです。一方で、作品としては素晴らしいと思いますが、24 (TWENTY-FOUR)のようなアクション・サスペンス だと結論が分かってしまうと、何度も繰り返し見る、という点で少し気力がいるような気がします。

6) 最後に、そうした様々な題材で出てきた自分が知らない言葉を大切にすることです。ある意味、“かわいがる”と言っても過言ではないと思います。分からない単語をそのままにせず、しっかりと辞書で意味を確認し、それをノートにまとめ、何度も何度も見返し、声に出し、自分のものにしていきます。一見遠回りに見えるやり方かもしれませんが、結果的に『あ、これが語学マスターへの近道』だったと気が付く日が必ず来ます。

スポンサー広告