スポンサーリンク



「人魚姫」日本語音声対訳 14 人魚姫の選択

スポンサーリンク


関連コンテンツ



人魚の姫は、天幕にたれたむらさきのとばりをあけました。
The little mermaid drew aside/ the purple curtain/ from the tent
人魚の姫はわきへ引いた/ 紫のカーテンを/ テントから

draw a curtain (窓に)カーテンを引く

うつくしい花よめは、王子の胸にあたまをのせて、休んでいました。
and looked at the beautiful bride/ asleep/ with her head on the prince’s breast.
そして美しい花嫁を見た/ 眠っている/ 王子の胸に頭を乗せて

姫は、腰をかがめて、王子のうつくしいひたいに、そっとくちびるをつけました。
She bent over him/ and kissed his fair brow,
姫は王子の上に腰をかがめ/ 端正な額にキスをした

東の空をみると、もうあけ方のあかね色がだんだんはっきりして来ました。
looked at the sky/ where the dawn was spreading fast,
空を見た/ 夜明けが迫っている

spread (空間的に)広がる,延びる,及ぶ; 展開する

姫は、そのとき、するどい短刀のきっさきをじっとみて、
looked at the sharp knife,
鋭いナイフを見た

その目をふたたび王子の上にうつしました。
and again/ fixed her eyes on the prince,
そして再び/ 王子に目を移した

王子は夢をみながら、花よめの名をよびました。
who,/ in his dream/ called his bride by name.
王子は/ 夢の中で/ 花嫁を名前で呼んだ

王子のこころのなかには、花よめのことだけしかありません。
Yes!/ she alone was/ in his thoughts!
そう!/ 彼女だけが/ 彼の心を占めていた!

短刀は、人魚の姫の手のなかでふるえました。
For a moment/ the knife quivered/ in her grasp,
その間/ ナイフは震えていた/ ぎゅっと握った手の中で

quiver (小刻みに)揺れる, 震える
grasp 強い握り; 抱き締めること

でも、そのとき、姫は短刀を波間とおく投げ入れました。
then she threw it/ far out among the waves,
その途端彼女はナイフを放り投げた/ 遠くの波間へ

投げた所に赤い光がして、そこから血のしずくがふきだしたようにおもわれました。
now rosy in the morning light, and where it fell the water bubbled up like drops of blood.
赤い朝焼けの光が注ぎ/ ナイフが落ちた所に/ 水が泡立った/ 血のしぶきの様に

もういちど、姫は、もう半分うつろな目で、王子をみました、
Once more she looked at the prince,/ with her eyes already dimmed/ by death,
もう一度姫は王子を見た/ かすんだ目で/ 死の傍らの

dim 薄暗くなる,かすむ

そして、身をおどらせて、海のなかへとび込みました。
then dashed overboard and fell,
そして船から身を投げた

dash 突進する,急行する
overboard 船外に,(船から)水中に

そうしてみるみる、からだがあわになってとけていくようにおもいました。
her body dissolving into foam.
泡に溶けていく彼女の体

dissolve into 溶け込む

いま、お日さまは、海の上にのぼりました。
Now the sun rose from the sea
今太陽が海から昇った

その光は、やわらかに、あたたかに、死のようにつめたいあわの上にさしました。
and with its kindly beams warmed/ the deadly cold foam,
そしてその優しい光は暖めた/ 死の様な冷たい泡を

deadly 死[死人]のような

人魚の姫は、まるで死んで行くような気がしませんでした。
so that the little mermaid did not feel/ the chill of death.
それで人魚の姫は感じなかった/ 死の冷たさを

chill 冷え,(空気・水などのひやりとする)冷たさ

あかるいお日さまの方を仰ぎました。
She saw the bright sun,
彼女は輝く太陽を見た

すると、空の上に、なん百となく、すきとおるような神神しいもののかたちがみえました。
and above her floated/ hundreds of beauteous ethereal beings,
すると彼女の上に浮いていた/ 何百もの麗しい霊のような存在が

beauteous〈気候・景色など〉うるわしい,美しい
ethereal 天空の, 天上の, この世のものでない

そのすきとおるもののむこうに、船の白い帆や、空のあかい雲をみました。
through which/ she could see/ the white ship and the rosy heavens;
それらによって/ 彼女は見る事が出来た/ 白い船と赤い空を

空のその声はそのままに歌のふしでしたが、
their voices were melodious,
その声は音楽の様だった

melodious 調子の美しい,音楽的な

でもそれはたましいの声で、
but so spirit-like that
だがとても精神的で

人間の耳にはきこえません。
no human ear could hear them,
人間の耳は聞く事が出来ない

そのすがたもやはり人間の目ではみえません。
any more than/ earthly eye could see/ their forms.
同様に/ 人間の目は見る事が出来ない/ それらの姿を

any more than 同様に

それは、つばさがなくても、しぜんとかるいからだで、ふうわり空をただよいながら上がって行くのです。
Light as bubbles/ they floated through the air/ without the aid of wings.
泡の様に軽く/ 彼らは空気の中を漂う/ 翼なしで

aid 手伝い,助力; 援助,救援; 扶助

人魚の姫も、やはりそれとおなじものになって目にはみえないながら、ただよう霊のようなものが、あわのなかから出て、だんだん空の上へあがって行くのがわかりました。
The little mermaid perceived/ that she had a form like theirs;/ it gradually took shape out of the foam.
人魚の姫は悟った/ 自分も彼らの様になったと/ 泡から徐々に形づくられて

perceive that〈…ということを〉理解する,悟る
gradually 徐々に, 次第に

「どこへ、あたし、いくのでしょうね。」と、人魚の姫は、そのときたずねました。
‘To whom am I coming?’ said she,
「私は誰の所へ行くの?」と彼女は言った

その声は、もうそこらにうきただよう霊のなかまらしく、
and her voice sounded like that/ of the other beings,
彼女の声は聞こえた/ 他の世界の存在の様に

人間の音楽にうつしようのない、たましいのひびきのようになっていました。
so unearthly in its beauty/ that no music of ours could reproduce it.
その美しさあまりに神秘的で/ 私達の音楽では表わしようがない

unearthly この世のものとも思われない, 超自然的な
reproduce〈場面・音などを〉再現する,再生する

すると、「大空のむすめたちのところへね。」と、ほかのただよう霊のなかまがいいました。
‘To the daughters of the air!’ answered the others;
「天空の娘達の所に!」と他の者が答えた

「人魚のむすめに死なないたましいはありません。
‘a mermaid has no undying soul,
「人魚は死なない魂を持たない

人間の愛情をうけないかぎり、それをじぶんのものにすることはできません。
and can never gain one/ without winning the love of a human being.
そして決して得られない/ 人間の愛を勝ち取らずに

gain 獲得する,得る

かぎりないいのちをうけるには、ほかの力にたよるほかありません。
Her eternal life/ must depend upon an unknown power.
彼女の永遠の命は/ 未知の力に頼らねばならない

eternal 永遠の,永久の; 不朽の,不滅の

大空のむすめたちもながく生きるたましいをもたないかわり、
Nor have the daughters of the air/ an everlasting soul,
天空の娘達もまた持たない/ 死なない魂を

everlasting 永久に続く, 不朽の, 永遠の

よい行いによって、じぶんでそれをもつこともできるのです。
but by their own good deeds/ they may create one for themselves.
だが彼らは自身のよい行ないにより/ 自分の為にそれを創りだせるかもしれない

deed 行為,行動; 功業
create 〈新しいものを〉創造する

あたしたちは、あつい国へいきます。
We fly to the tropics
私達は熱帯地方へ飛びます

the tropics 熱帯地方

そこへすずしい風をもっていきます。そこは人間なら、むんむとする熱病の毒気で死ぬような所です。
where mankind is the victim/ of hot and pestilent winds;/ there we bring cooling breezes.
そこは人間が犠牲となる所/ 高熱や伝染病で/ そこへ私達はすずしい風を運ぶ

be a victim of 犠牲となる
pestilent〈病気が〉伝染する,伝染病の

空のなかに花のにおいをふりまいて、
We diffuse the scent of flowers/ all around,
私達は花の香りを振りまく/ あたり一面に

diffuse まき散らす,満ちわたらせる
scent におい, (特に, よい)香り, 香気

ものをさわやかにまたすこやかにする力をはこびます。
and bring refreshment and healing/ in our train.
そして爽やかさと癒しをもたらす/ 修行によって

refreshment 元気回復,気分をさわやかにする
healing 癒し, 修復, 治癒
train 修練;教練;訓練;養成

こうして、三百年のあいだ
When, for three hundred years,
三百年もの間

つとめて、あたしたちの力のおよぶかぎりのいい行いをしつくしたあと、
we have laboured to do all the good in our power,
私達は全ての良い行ないに努め/ 力を尽くして

labour = labor 働く,労働する,精を出す

死なないたましいをさずかり、
we gain an undying soul
死なない魂を得る

人間のながい幸福をわけてもらうことになるのです。
and take a part in/ the everlasting joys of mankind.
そして共有する/ 人間の永遠の喜びを

part in 関係,関与,かかわり

お気のどくな人魚の姫、
You, poor little mermaid,
あなたは、可愛そうな人魚の姫

あなたもやはりあたしたち同様まごころこめて、おなじ道におつとめになったのね。
have with your whole heart struggled for/ the same thing/ as we have struggled for.
心を尽くして努めた/ 同じ事を/ 私達が努めたのと

struggle for〔…を求めて〕努力する

よくも苦みをおこらえなさったのね。
You have suffered/ and endured,
あなたは苦しみ/ 耐え忍び

suffer 我慢して耐える
endure (辛抱強くじっと)我慢する

それで、いま、大空の霊の世界へ、ごじぶんを引き上げるまでになったのですよ。
raised yourself to the spirit-world of the air, and now, by your own good deeds you may,
自分自身を引き上げた/ 天空の霊の世界に/ そして今/ あなた自身の良い行ないによって/ それを得るでしょう

あと三百年、
in the course of three hundred years,
三百年の内に

in the course of …のうちに

よい行いのちからで、
work out for yourself
自分自身でもたらすのです

work out 苦心して成就する,成し遂げる

やがて死ぬことのないたましいがさずかることになるでしょう。」
an undying soul.’
死なない魂を

そのとき、人魚の姫は、神さまのお日さまにむかって、光る手をさしのべて、
Then the little mermaid lifted/ her transparent arms/ towards God’s sun,
その時人魚の姫は高く掲げた/ 透き通った両腕を/ 神の太陽へ

transparent 透明な,透き通る

生まれてはじめての涙を目にかんじました。
and for the first time shed tears.
そして初めて涙を流した

shed〈血・涙などを〉流す,こぼす

そのとき、船の上は、王子のもとから彼女がいなくなってがやがやしはじめました。
On board ship all/ was again life/ and bustle.
船上全体は/ また活気づいて/ せわしくなった

life 元気,精力,活気,生気
bustle 忙しそうに動く; せわしく働く

王子と花よめがじぶんをさがしているのを、彼女はみました。
She saw/ the prince with his lovely bride/ searching for her;
彼女は王子を見た/ 美しい花嫁と一緒の/ 自分を捜している

ふたりは、かなしそうに、わき立つ海のあわをながめました。
they looked sadly/ at the bubbling foam,
彼らは悲しげに眺めた/ 泡立つ海の泡を

彼女が海にはいってそれがあわになったことを知っているもののようでした。
as if they knew that/ she had thrown herself into the waves.
まるで知っているかの様に/ 彼女が波に身を投げた事を

目にはみえないながら、彼女は、花よめのひたいにせっぷんをおくって、王子にほほえみかけました。
Unseen/ she kissed the bride on her brow,/ smiled at the prince,
目には見えないが/ 彼女は花嫁の額にキスをして/ 王子に微笑んだ

unseen 人知れず, (目に)見えない

さて、ほかの大空のむすめたちとともども、そらのなかにながれてくるばら色の雲にまぎれて、たかくのぼって行きました。
and rose aloft/ with the other spirits of the air/ to the rosy clouds which sailed above.
そして空高く昇った/ 他の天空の霊達と共に/ 上空で流れる赤らむ雲へ

aloft 上に, 高く
sail〈鳥・魚・雲・飛行船などが〉なめらかに進む,泳ぐ,飛ぶ,浮かぶ

「三百年たてば、あたしたち、こうしてただよいながら、やがて神さまのお国までものぼって行けるのね。」
‘In three hundred years/ we shall thus float/ into Paradise.’
「三百年で/ 私達はこの様に漂って/ 天国に行けるのね」

thus このように,かように

「いいえ、そう待たないでも、いけるかもしれませんの。」
‘We might reach it sooner,’
「もっと早く行けますよ」

と、大空のむすめのひとりがささやいてくれました。
whispered one.
1人が囁いた

「目にはみえないけれど、あたしたちは、こどもたちのいるところなら、どの人間の家にもただよっています。
‘Unseen/ we flit into those homes of men/ where there are children,
「目には見えないが/ 私達は人々の家を飛び回る/ 子供達がいる

flit すいすい[ひらひら]飛ぶ,飛び回る

そこで毎日、その親たちをよろこばせ、その愛をうけているいい子をみつけるたんびに、
and for every day/ that we find a good child/ who gives pleasure to its parents/ and deserves their love
そこで日ごとに/ 私達が良い子供を見い出すと/ 喜びを両親に与える/ そして彼らの愛を受けるに値する

deserve〈…の〉価値がある,〈…を〉受けるに足る

そのためしのときがみじかくなります。
God shortens/ our time of probation.
神は短かくする/ 私達の試しの時を

shorten (…を)短くする, つめる
probation 見習い期間,実習(期間); 仮採用(期間)

こどもは、いつ、あたしたちがへやのなかへはとんで行くかしらないのです。
The child does not know/ when we fly through the room,
子供は知らない/ いつ私達が部屋の中を飛ぶのかを

でも、あたしたちが、いいこどもをみて、ついよろこんでほほえみかけるとき、
and when we smile/ with pleasure at it
それで私達が微笑む時/ そこで喜び

三百年が一年へります。
one year of our three hundred is taken away.
三百年の一年が取り除かれる

けれど、そのかわり、いたずらな、またはいけないこどもをみて、
But if we see/ a naughty or badly disposed child,
だがもし私達が見るならば/ 強情または悪さをする子供を

naughty わんぱくな, 言うことをきかない
dispose〈…したい〉気にさせる

かなしみの涙をながさせられると、
we cannot help shedding tears of sorrow,
悲しみの涙を流さずにはいられない

そのひとしずくのために、あたしたちのためしのときも、一日だけのびることになるのですよ。」
and every tear/ adds a day/ to the time of our probation.’
そして一つ一つの涙は/ 一日を追加する/ 私達の試しの時に」