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「人魚姫」日本語音声対訳 04 地上への旅立ち

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さて、こうして、おねえさまたちは、めいめいに、はじめて海の上へ浮かんで出てみた当座こそ、
The first time/ any of the sisters rose above the water
最初の時/ 姉妹の誰もが水から上がった

まのあたりみた、めずらしいもの、うつくしいものに心をうばわれました。
she was delighted/ by the novelties and beauties/ she saw;
彼女は感動した/ 斬新なものや美しいものに/ 彼らが見た

delighted 大いに喜んで
novelty 奇抜な, 斬新な

けれども、いまは一人まえのむすめになって、
but once grown up,
でも一旦大きくなり

once grown up 一旦大きくなるならば

いつどこへでも好きかってにいかれるとなると、
and at liberty to go/ where she liked,
行く自由があると/ どこでも好きな所へ

at liberty 解放されて, 自由で

もうそれも心をひかなくなりました。
she became indifferent
彼女は無関心になり

indifferent 〔…に〕無関心で,冷淡で,むとんちゃくで

またうちがこいしくなって来て、
and longed for her home;
家が恋しくなった

やがて、ひと月もすると、
in the course of a month or so
1ヵ月ほどのうちに

in the course of …のうちに
or so [数量・期間の表現に続いて] …ばかり, …ほど

やはり海の底ほどけしきのいい所はどこにもないし、うちほどけっこうな住居はないわ、といいあうようになりました。
they all said that/ after all/ their own home in the deep was best,/ it was so cosy there.
彼ら全員は言った/ 何といっても/ 自分達の家が最高で/ そこがとても居心地いいと

after all 何といっても
cosy 居心地良い

もういく晩も、夕方になると、
Many an evening
多くの晩

五人のおねえさまたちは、おたがい手を組んで、つながって、
the five sisters interlacing their arms
腕を組んだ5人の姉妹達は

interlace〈糸・指・枝などを〉組み合わせる

水の上へあがっていきました。
would rise above the water together.
一緒に水の上に上がった

みんな、どんな人間もおよばないうつくしい声をもっていました。
They had lovely voices,/ much clearer than any mortal,
彼らは美しい声を持っていた/ どんな人間よりも透き通った

clear 澄んだ,すき通った
mortal (普通の)人間

あらしが来かけると、
and when a storm was rising,
そして嵐が迫っていた時

やがて船はしずむほかないことが分かっていますから、
and they expected ships/ to be wrecked,
彼らは船を予期した/ 難破すると

expect 予期する

みんなして船のそばへおよいでいって、やさしい歌をうたってやりました。海の底がどんなにうつくしいか、
they would sing/ in the most seductive strains/ of the wonders of the deep,
彼らは歌った/ 最高に魅惑的な歌を/ 海の底の素晴らしさの

seductive 誘惑[魅惑]的な,人を引きつける
strain 曲,旋律; 詩歌,歌〔of〕

だから船人たちはしずむことをそんなにこわがるにはおよばない、そううたってやるのです。
bidding/ the seafarers have no fear/ of them.
告げている/ 船乗りは恐れるにおよばないと/ それらを

bid〈あいさつ・別れなどを〉述べる,告げる
seafarer 船乗り

でも、そのことばは、人間には分かりません。
But the sailors could not understand/ the words,
でも船乗りには分からない/ その言葉が

それをやはりあらしの音だとおもっていました。
they thought/ it was the voice of the storm;
彼らは思った/ それが嵐の音であると

それにまた、しずんでいくひとたちが、しずみながら海の底をみるなんて、そんなうまいわけにはいかないのです。
nor could it be theirs/ to see this Elysium of the deep,
それはまた彼らにもありえない/ 海底のこの極楽を見ることは

nor …もまた…ない
Elysium 極楽,浄土,理想郷

なぜなら、船がしずむと、
for when the ship sank
と言うのは船が沈めば

それなり船人はおぼれてしまいます。
they were drowned,
彼らは溺れる

そうして、しかばねになって、人魚の王さまの御殿へはこばれてくるのですもの。
and only reached/ the Merman’s palace in death.
そして着くだけ/ 死んで人魚の宮殿に

姉妹たちが、こうして手をつないで、夕方、水の上へあがっていくとき、
When the elder sisters rose up/ in this manner,/ arm-in-arm, in the evening,
姉達が上がった時/ このようにして/ 夕暮れ時に腕を組んで

in this manner こういうふうに

いちばん下の姫だけは、いつもひとりぼっちあとにのこっていました。
youngest remained/ behind quite alone,
最年少は残っていた/ 1人で後に

そうしてみんなのあとをみおくっていると、なんだか泣かずにいられない気持になりました。
looking after them/ as if she must weep;
皆の後を見送っていると/ まるで彼女は泣かずにいられない様だった

けれども、人魚には涙というものがないのです。
but mermaids have no tears,
でも人魚には涙がない

そのため、よけい、せつないおもいをしました。
and so they suffer all the more.
それで彼らはよけい苦しむ

suffer 〔…に〕苦しむ,悩む

「ああ、あたし、どうかしてはやく十五になりたいなあ。」と、この姫はいいました。
‘Oh! if I were only fifteen!’/ she said,
ああ、私が十五であれば/ 彼女は言った

「あたしにはわかってる。あの上の世界でも、そこにうちをつくって住んでいる人間でも、あたしきっと好きになれるでしょう。」
‘I know/ how fond I shall be/ of the world above, and/ of the mortals who dwell there.’
私は分ってる/ どれほど好きになれるか/ 上の世界と/ そこに住む人間を

fond 〔…を〕好んで〔of〕
dwell 住む, 居住する

するうち、とうとう、彼女も十五になりました。
At last her fifteenth birthday came.
とうとう彼女の十五歳の誕生日が来た

「さあ、いよいよ、あなたも、わたしの手をはなれるのだよ。」
‘Now we shall have you off our hands,’
さあ、我らはあなたを我らの手から離す

と、ごいんきょのおばあさまがおっしゃいました。
said her grandmother,/ the old queen-dowager.
祖母は言った/ 年取った皇太后の

dowager (王侯の)未亡人

「では、いらっしゃい、おねえさまたちとおなじように、あなたにもおつくりをしてあげるから。」
‘Come now, let me adorn you/ like your other sisters!’
さあ、飾らせて/ 姉達と同じ様に

adorn (さらに美しいもので)飾る,装飾する

こういって、おばあさまは、白ゆりの花かんむりを、彼女の髪にかけました。
and she put a wreath/ of white lilies round her hair,
そして彼女は花輪を掛けた/ 髪の周りに白いユリの

wreath 花輪,花冠

でも、その花びらというのが、一枚一枚、真珠を半分にしたものでした。
but every petal of the flowers was/ half a pearl;
でも花の一枚一枚の花びらは/ 半分真珠でした

petal 花弁, 花びら

それからまだおばあさまは、八つまで、大きなかきを、姫のしっぽにすいつかせて、
then the old queen/ had eight oysters fixed on/ to the princess’s tail
そして年取った女王は/ 8つの牡蠣を取り付けさせた/ 王女の尻尾に

fix on 取り付ける,据える

それを高貴な身分のしるしにしました。
to show her high rank.
彼女の高い身分を示す為に

「そんなことをおさせになって、あたし、いたいわ。」と、人魚の姫はいいました。
‘But it hurts so!’/ said the little mermaid.
でもとても痛む/ 人魚の姫は言った

「身分だけにかざるのです。すこしはがまんしなければね。」と、おばあさまは、おっしゃいました。
‘You must endure the pain/ for the sake of the finery!’/ said her grandmother.
お前は痛みに耐えねばならない/ 晴れ着の為に/ 祖母は言った

endure (辛抱強くじっと)我慢する
for the sake of …のために
finery 美服,華美な装飾品

ああ、こんなかざりものなんか、どんなにふり捨てたかったでしょう。
But oh!/ how gladly would she have shaken off/ all this splendour,
でもああ!/ どれだけ振り捨てたかったか/ こんな装飾品などを

gladly 喜んで,快く
shake off 取り除く,逃れる
splendour 光彩, 壮麗

おもたい花かんむりなんか、どんなにほうりだしたかったでしょう、
and laid aside the heavy wreath.
そして重い花輪を横に置いた

lay 横たえる,置く

姫は、花壇に咲いている赤い花のほうが、はるかよく似合うことはわかっていました。
Her red flowers in her garden/ suited her much better,
彼女の庭の赤い花は/ ずっと彼女に似合った

suit 適する, 合う

でも、いまさら、それをどうすることもてきません。
but she did not dare to make/ any alteration.

dare to あえて…する
alteration 変更, 改変, 改造

「いってまいります。」と、姫はいって、
‘Good-bye,’/ she said,
「行って来ます」/と彼女は言った

それはかるく、ふんわりと、まるであわのように、水の上へのぼっていきました。
and mounted/ as lightly and airily/ as a bubble/ through the water.
そして上った/ 軽く軽やかに/ 泡の様に/ 水中を

mount〔…に〕上る,登る
airily 軽快に,軽やかに

姫が、海の上にはじめて顔をだしたとき、ちょうどお日さまはしずんだところでした。
The sun had just set/ when her head rose/ above the water,
太陽はちょうど沈んだ/ 彼女の頭が出た時/ 水上に

でもどの雲もまだ、ばら色にも金色にもかがやいていました。
but the clouds were still lighted up/ with a rosy and golden splendour,
でも雲はまだ照らされていた/ バラ色と金色の輝きで

そうして、ほの赤い空に、よいの明星が、それはうつくしくきらきら光っていました。
and the evening star sparkled/ in the soft pink sky,
そして宵の明星はきらめいていた/ 柔らかいピンクの空で

evening star よいの明星
sparkle きらめく,きらきら光る

空気はなごやかに澄んでいて、
the air was mild and fresh,
空気は穏やかで澄んでいた

海はすっかりないでいました。
and the sea as calm as a millpond.
そして水車用貯水池と同じ位穏やかな海

millpond 水車用貯水池

そこに三本マストの大きな船が横たわっていました。
A big three-masted ship/ lay close by
大きい三本マストの船が/ 近くに停泊した

そよとも風がないので、一本だけに帆が上げてあって、
with only a single sail set,/ for there was not a breath of wind,
1本の帆だけ上げてあった/ 風が吹いてなかったから

sail (船の)帆
breath (風の)そよぎ

それをとりまいて、水夫たちが、帆綱や帆げたに腰をおろしていました。
and the sailors were sitting about the rigging,
on the cross-trees, and at the mast-heads.
そして水夫達は座っていた/ 装具の辺りに/ クロスツリーの上に/ そしてマストヘッドの所に

rigging 索具《マストや帆を支えるロープやチェーン類一式》

そのうち、音楽と唱歌の声がして来ました。
There was music and singing on board,
音楽と歌が始まった/ 船上に

やがて夕やみがせまってくると、
and as the evening closed in
そして夕暮れが迫ると

なん百とない色がわりのランプに火がともって、
hundreds of gaily coloured/ lanterns were lighted—
何百もの華やかに色付けられた/ ランタンは点灯され

gaily 派手に,華やかに
lantern 手さげランプ,角灯,カンテラ

それは各国の国旗が、風になびいているように見えました。
they looked like the flags of all nations/ waving in the air.
それらは全世界の国旗のように見えた/ 空中になびいている

人魚の姫は、その船室の窓の所までずんずんおよいでいきました。
The little mermaid swam right up/ to the cabin windows,
人魚の姫はすかさず泳いだ/ 船室の窓に向かって

波にゆり上げられるたんびに、
and every time she was lifted/ by the swell
そして持ち上げられるたびに/ うねりによって

every time たびごとに
swell (波の)うねり,大波

姫は、水晶のようにすきとおった窓ガラスをすかして、なかをのぞくことができました。
she could see/ through the transparent panes
彼女は見れた/ 透明なガラスを透かして

transparent 透明な, 透き通る
pane 窓ガラス(の 1 枚)

そこには、おおぜい、晴着を着かざった人がいました、
crowds of gaily dressed people.
華やかに着かざった人々の群衆

crowds 群衆, 大勢, 人込み
gaily 派手に,華やかに

でも、そのなかで目立ってひとりうつくしいのは、大きな黒目をしたわかい王子でした。
The handsomest of them all was/ the young prince/ with large dark eyes;
その中で一番りりしかったのは/ 若い王子だった/ 大きな黒い目の

王子はまだ満十六歳より上にはなっていません。
he could not be much more than sixteen,
彼は十六より上ではないだろう

ちょうどきょうがおたん生日で、このとおりさかんなお祝をしているしだいでした。
and all these festivities were/ in honour of his birthday.
そして全てこれらの行事は/ 彼の誕生日祝いだった

festivity 祭礼, 祝祭, 祭典
in honour of 祝い